ガバナンスに「信頼」は不要である
〜統制を「利益の源泉」へ〜
過去の帳簿を円単位で突き合わせ、ハンコを積み上げた先に、企業の未来は見えるのか?
私は過去、PwCの金融部、そして伊藤忠商事という「数字がすべて」の戦場で20年間、この不条理な問いに直面し続けてきた。既存の監査も内部統制も、その多くは事後的な「検視」に過ぎない。サンクコストに縛られ、人間の「善意」という脆弱な前提に寄りかかったガバナンスは、もはやリスク管理ではなく、単なる「コスト」という名の思考停止である。
人間は、環境が整えば魔が差す生き物だ。ならば、必要なのは精神論ではない。
「不正が物理的に不可能になる仕組み(AI)」による、リアルタイムガバナンスへの完全移行であろう。
100点の精緻な事後レポートより、今この瞬間の60点の異常検知こそが、企業をその価値の毀損から救い出す。私は、総合商社で培った「冷徹な合理性」と、AIによる「絶対的統制」を融合させ、ガバナンスを経営のブレーキから、アクセルへと変革するよう試みる。
これは、過去のガバナンス論への弔辞であり、合理性で未来のキャッシュフローを志向するリーダーたちへの誘いである。
事後統制からリアルタイムな制圧へ
従来のJSOXや内部統制が機能しない理由は明白である。それは「起きた後」に、断片的なサンプルを突き合わせるだけの「検視」に過ぎないからだ。
人間は、環境次第で誰でも魔が差す生き物である。ならば、信ずべきは人間の善意ではなく、「不正が物理的に不可能になるシステム」であろう。私は現在、この次世代ガバナンスモデルとも言える不正制圧アーキテクチャを提唱している。これは不正発見アルゴリズム等ではなく、不正が物理的に不可能になるよう業務を設計する」という、ガバナンスの新しいパラダイム(設計思想)である。そして私は、この設計思想を『Sentinel-Zero(センチネル・ゼロ)』と名付ける。
Sentinel-Zero(センチネル・ゼロ)』具現化へのアプローチ
現在、私はこの構想を具現化するため、以下のステップで企業のガバナンス変革を支援している。
- Step 1:統制の「外科手術」(現状の最適化) AIを導入する前に、まず対象業務に蔓延る「不合理なルール」と「形骸化したプロセス」を削ぎ落とす。総合商社で培った定量化原則に基づき、最小限の工数で最大のリスクをカバーする「リスクベース・ガバナンス」を再構築する。
- Step 2:データの「純血化」(デジタル前提の再設計) 将来的にAIがリアルタイムで異常を検知できるよう、証憑の発生から承認、記録に至るまでのデータフローを「アルゴリズムが読み取れる形」へ再定義する。
- Step 3:テクノロジーによる制圧(Sentinel-Zeroの実装) 整理されたデータ基盤の上に、グラフニューラルネットワーク(GNN)等の先端技術を用いた検知ロジックを実装する。点(単一の伝票)ではなく線(商流全体のネットワーク)を監視し、循環取引や癒着を物理的に遮断する世界を目指す。
ガバナンスは、経営のブレーキではない。
アクセルを全開にするための、最強の「安全装置」であるべきだ。
私は、この思想に共鳴する経営者やリーダーと共に、AI時代の新しい統制のあり方を創り上げていきたい。
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